特集 COVID-19
各論
COVID-19症例から学ぶ 日本の川崎病とCOVID-19関連小児多系統炎症性症候群
荻原 瑛由実
1
,
宮田 世羽
1
OGIHARA Ayumi
1
,
MIYATA Yohane
1
1杏林大学医学部小児科
pp.207-210
発行日 2022年1月1日
Published Date 2022/1/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000039
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はじめに
小児多系統炎症性症候群とはCOVID-19感染の2~6週間後に発熱,消化器症状,循環障害,また川崎病様の臨床症状を呈して発症する炎症疾患である。米国ではmultisystem inflammatory syndrome in children(MIS-C),英国ではpediatric multisystem inflammatory syndrome(PIMS)と称される(本稿ではMIS-Cに統一する)。COVID-19の世界的パンデミックのなか,2020年4月に英国で8名の小児が川崎病または毒素性ショック症候群の症状を呈したとの集団報告があった1)。その後,欧州,米国に続き世界各国で同様の報告が寄せられ,2021年10月4日時点で米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention)に報告されたMIS-C患者は5217名(死亡者46名)となった2)。小児COVID-19のほとんどが無症候または軽症であるのに対し,重症な経過となるMIS-Cは早期に疑い診断することが求められる。MIS-Cは民族間で発症率に差があり,アフリカ系・ヒスパニック系に多く,日本を含むアジアでは少なく2),わが国でのまとまった報告はない。またその臨床症状から川崎病や消化器疾患と診断される可能性があるため,疾患概念の周知が重要である。
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