特集 周産期診療コツと落とし穴
Ⅰ.母体・胎児編
(7)妊娠中・後期〔胎児〕
50.胎児発育不全(FGR)の診断は総合的に行え
長﨑 澄人
1
Sumito Nagasaki
1
1東邦大学医療センター大森病院産婦人科
キーワード:
胎児発育不全(FGR)
,
胎児SGA
,
超音波パルスドプラ法
,
成長速度
,
CPR
Keyword:
胎児発育不全(FGR)
,
胎児SGA
,
超音波パルスドプラ法
,
成長速度
,
CPR
pp.170-173
発行日 2026年10月10日
Published Date 2026/10/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002865
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はじめに
我が国における胎児発育不全(fetal growth restriction:FGR)の診断基準は転換期にある。日本で長らく広く用いられている「推定胎児体重が-1.5 SD(standard deviation)以下」という基準は簡便でスクリーニングとしては非常に有用である一方,-1.5 SD未満という“統計学的に小さい胎児”のなかに,健常であるにもかかわらずその児の成長ポテンシャルによって小さい児と本来もつ成長ポテンシャルに到達できないために小さい児が混在していることには課題があった。そもそもFGRは,「胎児が本来もっている成長ポテンシャルを獲得できない」病態である。病因を表1に示すが,最も代表的なものは胎盤の機能不全である1)。FIGO(International Federation of Gynaecology and Obstetrics)が,超音波パルスドプラ法による胎盤の機能不全の評価を組み込んだFGRの診断基準を2021年に報告1)し,日本でもそれを踏襲するかたちで日本産科婦人科学会の周産期委員会から報告が行われ2)(表2),パーセンタイルの基準値も公示された3,4)。そのため,今後は我が国でも胎盤の機能不全に重きを置いたFGRの診断基準が利用可能である。ただし,FGRは周産期医療に非常に大きな影響を及ぼす項目であり,すぐに周産期委員会からの報告をもって一律に診療ガイドラインなどで診断基準を変更することは現実的ではなく,浸透には時間がかかるものと思われる。

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