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はじめに
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は,ヒトの皮膚や鼻腔などの粘膜に定着しており,健常人の20~30%が保有している。S. aureusは細菌感染そのものによる症状だけでなく,細胞傷害活性やT細胞を非特異的に活性化するスーパー抗原活性を有し,外毒素による症状も呈する。1961年に半合成ペニシリンのメチシリンに耐性を獲得したS. aureusはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)と命名され,その後,各種抗菌薬に耐性を獲得した多剤耐性菌となった1)。MRSAの院内感染は患者の予後に影響するだけでなく医療安全上の問題に及ぶ可能性が広く認識され,各医療機関で積極的な院内感染対策や抗菌薬の適正使用が行われるようになり,MRSA分離率は減少傾向にある2)。MRSAは院内感染型MRSA(hospital-acquired MRSA:HA-MRSA)と市中感染型MRSA(community-acquired MRSA:CA-MRSA)に大別されるが,近年は院内分離株においてCA-MRSAの割合が増加し,抗菌薬感受性にも変化が認められるようになってきている1)。厚生労働省の院内感染対策サーベイランス事業(Japan Nosocomial Infections Surveillance:JANIS)の新生児集中治療室(NICU)部門2023年1~12月の年報(図)3)によると,MRSAを含むS. aureusによる感染症が4割程度を占めており,NICUにおいても院内感染の主要な起因菌であることに変わりはない。

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