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はじめに
近年の新生児集中医療の進歩,医療者の疾患認知や診断率の向上により,新生児期の血栓症の報告例は増加傾向にある。新生児の血栓症の原因として,心疾患や感染症などの他,先天性血栓性素因としては第Ⅴ因子変異(factor V Leiden),第Ⅱ因子の遺伝子多型(prothrombin G20210A),凝固制御因子であるプロテインC(PC),プロテインS(PS),アンチトロンビン(AT)欠乏症,先天的なADAMTS13欠乏のUpshaw-Schulman症候群などがあるが,近年の海外の報告では新生児血栓症の90%以上がカテーテル関連であり,新生児血栓症のほとんどは門脈肝系,右心房,および腎静脈または大静脈に位置すると報告されている1)。血栓症の治療は血栓症の誘因を除去あるいは是正しながら全身状態を管理し,急性期には抗凝固療法と血栓溶解療法を考慮する。症候性の新生児血栓症に対してわが国で主に使用されている抗凝固薬は,未分画ヘパリン(unfractionated heparin:UFH),低分子ヘパリン(LMWH),ビタミンK拮抗薬(VKA)であるワルファリンである。欧米ではフォンダパリヌクスも使用されている。それぞれの安全性データが公開されていることがその理由であるが,これらの薬剤においても,新生児における薬物動態や,新生児血栓症に対する有効性や安全性に関するエビデンスはほとんどなく,治療モニタリングの方法や目標範囲は十分に確立されていない。そのような状況においても,少しずつopinion basedの小児・新生児の血栓症の診断治療に関するガイドラインが策定され2,3),2018年には米国血液学会(American Society of Hematology:ASH)から小児の静脈血栓塞栓症の管理に関するガイドライン4)が発表された。さらに近年のエビデンスを加え,2024年にASH/国際血栓止血学会(ISTH)が小児患者の静脈血栓塞栓症の治療に関するガイドラインを更新した1)。

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