巻頭随想
父親とは?
いずみ たく
pp.9
発行日 1963年3月1日
Published Date 1963/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202497
- 有料閲覧
- 文献概要
父親になるのは嫌だ嫌だと思っている中に,とうとう二児の父親になってしまった.もう自分の存在理由としては,子供を養う金を稼ぐ以外はないような錯覚にとらわれている.母親は自分の肉体の一つの部分として子供を感じる事ができるのだが,父親にそれを感じさせることは一寸無理である。子供が自分に似ていればいる程,自分が否定されたような気になってしまう.僕もこの世の中に生まれたくて生まれたのではないように,自分の伜も,生まれたくて生まれてくるのではないのだと考えると,子供ができるということは一つの罪悪感すらともなってくる.
しかし不思議なもので,自分の意識とは別に,感覚的に父親としての喜びがみなぎってくるのはどうしたものだろう.親子とは,そのように感覚的なものかもしれないが,考えれば考える程不思議なものだ.
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.