特集 ちょっと気になる妊婦・胎児
母体編:妊娠中
血圧正常だが,尿蛋白(+)が続く/血圧正常,尿蛋白陰性だが,浮腫がひどい
森川 守
1
MORIKAWA Mamoru
1
1関西医科大学医学部産科学・婦人科学講座
pp.529-531
発行日 2025年5月10日
Published Date 2025/5/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002139
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はじめに
2005年に「妊娠中毒症」が「妊娠高血圧症候群」へと名称ならびに定義が改訂になって,ちょうど20年が経過する。前者では「高血圧」「蛋白尿」「浮腫」のどれか一つでも認めた場合に「妊娠中毒症」と診断された。つまり「高血圧」を認めなくても「妊娠中毒症」と診断され,「蛋白尿」と「浮腫」は「高血圧」と同等に扱われていた。一方,後者では「高血圧」を認めない場合には「妊娠高血圧症候群」と診断されない。すなわち,「蛋白尿」と「浮腫」は軽視されることになった。2005年の改訂の際に,妊娠高血圧腎症(preeclampsia:PE)は「高血圧+蛋白尿」と定義された。しかし,2018年の改訂1)では国際妊娠高血圧学会(ISSHP)からの提唱に準じ,「高血圧+蛋白尿」の他に「高血圧+母体臓器障害」と「高血圧+子宮胎盤機能不全」でもPEと診断されることになった。その結果,相対的に「蛋白尿」はさらに軽視されることになった。そして,近年海外では,PEから「高血圧+蛋白尿」を除外すべきとの意見すらある。この軽視がわが国の周産期予後を悪化させる可能性があることを危惧している。

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