特集 周産期の画像診断 第3版
胎児診断から新生児診断へ
胸水
鷹野 真由実
1
,
緒方 公平
2
,
中田 雅彦
1
TAKANO Mayumi
1
,
OGATA Kohei
2
,
NAKATA Masahiko
1
1東邦大学医療センター大森病院産婦人科
2東邦大学医療センター大森病院新生児科
キーワード:
胎児胸水
,
胎児水腫
,
胸腔穿刺
,
胎児胸腔―羊水腔シャント術
Keyword:
胎児胸水
,
胎児水腫
,
胸腔穿刺
,
胎児胸腔―羊水腔シャント術
pp.563-567
発行日 2024年12月23日
Published Date 2024/12/23
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001921
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はじめに
胎児胸水とは,胎児の胸腔内に水性の液体が異常に貯留した状態である。原発性胸水と続発性胸水に分類され,原発性胸水はリンパ管からのリンパ液の漏出によるものであり,いわゆる先天性乳糜胸である。続発性胸水は胎児貧血やウイルス感染,先天性心疾患,肺疾患,染色体異常などが原因で胸水が貯留したものであり,その予後は原疾患に左右される。胎児期に胸水が大量に貯留すると胸腔内圧上昇により下大静脈や心臓が圧排され,心不全をきたし,胎児水腫,胎児死亡や新生児死亡に至り予後不良となる。特に胎児水腫を伴って出生した場合の生命予後は不良であり,妊娠32週未満では死亡率が90%とも報告される1)。また,妊娠中期に多量の胸水貯留が長期間持続して肺が圧迫されていた場合は肺低形成をきたすリスクがある。さらに,胸腔内圧の上昇により食道が圧排され,羊水の嚥下が妨げられると,羊水過多をきたし早産の原因ともなる。このように重症例では合併症や周産期死亡が問題となるため,胎児期の積極的な介入が行われる。日本では2012年に胎児胸腔―羊水腔シャント術(thoraco- amniotic shunting:TAS)が保険収載され,胸腔穿刺・吸引が無効な重症例に対して行われている。TASは,胎児患側の胸腔にバスケットカテーテルを留置することで羊水腔に胸水をドレナージする治療法であり,1年生存率は約80%と良好な治療成績が報告されている2,3)。
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