増刊号 周産期診療のための病態生理
[新生児編]
中枢神経系
どのような機序で脳室周囲白質軟化症が進展するのか
川瀬 恒哉
1
KAWASE Koya
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科新生児・小児医学分野
キーワード:
脳室周囲白質軟化症
,
periventricular leukomalacia(PVL)
,
white matter injury(WMI)
Keyword:
脳室周囲白質軟化症
,
periventricular leukomalacia(PVL)
,
white matter injury(WMI)
pp.334-335
発行日 2023年12月28日
Published Date 2023/12/28
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001309
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基本病因,発生機序,解剖学的背景
1962年,Bankerらは主に早産児剖検脳で脳室周囲白質に結節様の壊死を認めることを報告し,“periventricular leukomalacia”(PVL,脳室周囲白質軟化症)と名づけた1)。それから60年の間,PVLの疾患概念は時代とともに変遷してきた。1980年代に入ると頭部超音波検査が登場し,後述するcystic PVLが古典的なPVLとして認識されるようになった。近年は周産期医療の進歩によりcystic PVLの頻度が低下してきている一方,頭部MRIの進歩や出生胎齢の低下により,早産児の白質傷害は実に多彩であることがわかってきた。また単なる白質傷害にとどまらない “encephalopathy of prematurity”(早産児脳症)という概念も提唱されており2),PVLの疾患概念には混乱が生じている。新生児神経学の権威であるVolpeは,“PVL” という用語はいまや適切なものではないとし,早産児の非出血性白質傷害を包括する呼称として “white matter injury”(WMI)が適切であると提唱している3)。本稿では “PVL” を用いるが,早産児の非出血性白質傷害の総称として理解されたい。
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