特集 数値からみる周産期医療 新生児編
新生児黄疸の治療基準
森岡 一朗
1
MORIOKA Ichiro
1
1日本大学医学部小児科学系小児科学分野
pp.1365-1369
発行日 2023年9月10日
Published Date 2023/9/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001093
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はじめに
黄疸とは,ビリルビンの上昇に伴い皮膚や眼球結膜が可視的に黄染した状態である。新生児の生理的黄疸は,胎児から新生児への適応の過程であり,ほぼすべての新生児で呈する。通常は生後2~3日目から肉眼的可視黄疸が出現し(血清総ビリルビン[total bilirubin:TB]:5~7mg/dL),生後4~6日頃にピークを迎え(TB:12mg/dL前後),以降漸減して日齢7~10頃に自然に消退していく1)。周産期・新生児領域で問題になるのは,主に非抱合(間接)型高ビリルビン血症である。新生児では血液脳関門が未熟であるため,アルブミンと結合していないビリルビンであるアンバウンドビリルビン(unbound bilirubin:UB)が神経組織内に入り,脳障害を引き起こすことがある(臨床診断名:ビリルビン脳症,病理診断名:核黄疸)2)。そのため,時期を逸せず光療法や交換輸血,アルブミン療法を行うことができるよう,新生児黄疸の治療基準が定められている。わが国においては,特に早産児のビリルビン脳症の発症を予防することが大きな課題となっている2)。本稿では,日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業「早産児核黄疸の包括的診療ガイドラインの作成」班から出されている「早産児ビリルビン脳症(核黄疸)診療の手引き」2)に基づき,新生児黄疸の治療基準についてまとめる。
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