特集 How to Follow-up―ハイリスク児フォローアップの必修知識2023
疾患別・領域別のフォローアップ
退院時にみられる疾患・合併症のフォローアップ
難聴
片岡 祐子
1
KATAOKA Yuko
1
1岡山大学病院聴覚支援センター・耳鼻咽喉科
pp.661-665
発行日 2023年4月10日
Published Date 2023/4/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000888
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はじめに
先天性両側難聴は全出生児の約1,000人に1~2人の割合で存在する頻度の高い疾患である。音声を用いた言語能力の獲得には臨界期があり,難聴を放置していると,言語発達の遅れや構音の障害をきたし,ひいては学習,コミュニケーションの問題につながる。ただし,早期に難聴を発見し介入を行った場合,続発する障害を予防,軽減できる。そういった背景から,1990年代より欧米諸国を中心に新生児聴覚スクリーニング(newborn hearing screening:NHS)が導入され,米国のEarly Hearing Detection and Intervention(EHDI)では,生後1か月までにNHS,3か月までに確定診断,6か月までに補聴開始という「1-3-6ゴール」が提唱され,わが国にも2001年から導入されている1)。NHS導入で早期診断,早期補聴器装用開始,また聴力レベルの確定も低年齢で行われることから,早期の人工内耳手術も実現されている。その成果は国内の多施設共同研究において,NHSにより生後6か月以内に療育を開始できる確率は20.21倍上昇し,さらに早期に療育を開始した児が良好な日本語言語性コミュニケーション能力を獲得する確率は3.23倍上昇することが報告されている2)。つまり,難聴児であっても良好な言語発達を目標とするのであれば,そのスタートラインにNHSがあると言っても過言ではない。
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