Medical Topics
小児の難聴—特に幼児難聴について
太田 文彦
1
1天理よろづ相談所病院耳鼻咽候科
pp.140-141
発行日 1973年2月10日
Published Date 1973/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205231
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幼児難聴とことばの発達
小児の難聴の1つの大きな問題は乳幼児期の難聴である。生まれつきあるいは乳児期から耳が聞こえないとことばは話せない。生まれて間もないころから,母親は子供がわかってもわからなくても,子供に話しかけ,子供の耳に"ことば"を注ぎ込んでいる。子供が少しでもそれに反応を示せばますます話しかける。このようなことが何日も何か月も続くうちに子供は音を聞き分け,"ことば"の意味を少しずつ理解するようになる。そして子供自身はbabbling(喃語)といわれる無意味な音声を発しているが,この音に対しても自分自身の聴覚が働いてだんだんそれをコントロールしていく。そして,発した"ことば"に対する親の反応によってだんだんに意味をもった"ことば"を使うことを覚えていく。順調に発達すれば4歳では1,500もの"ことば"を使うようになる。このように幼児の"ことば"の発達には聴覚は欠くことのできない重要なものである。
この聴覚を乳幼児期からそこなっている難聴児は,1)聞く"ことば"の理解の面で障害があり,2)話す"ことば"の発達の面でも障害が起こる。これが知能や社会性,性格にも異常を招来することになる。
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