特集 Controversies in perinatology 2023 新生児編
新生児黄疸に対する治療開始基準―森岡の基準(新神戸基準)を使う
阿部 真也
1
,
藤岡 一路
1
ABE Shinya
1
,
FUJIOKA Kazumichi
1
1神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野
pp.55-57
発行日 2023年1月10日
Published Date 2023/1/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000746
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はじめに
筆者ら神戸大学小児科一門は,現在もご健在の先先先代(三代前)教授である中村 肇先生が提唱された中村の基準(旧神戸基準)を用いた黄疸管理を長年にわたって行ってきた。その最大の特徴は,中村先生らが開発された修正ペルオキシダーゼ法によるアンバウンドビリルビン(unbound bilirubin:UB)測定を臨床応用したUBアナライザー(アローズ社)によるUB測定を取り入れていることである1)。本稿で述べるまでもないが,UBとはアルブミンと結合していないビリルビンのことを指し,その分子量の小ささから血液脳関門を自由に通過できる性質をもつ。UBは生理活性作用も高く,神経毒性を発揮することが知られており,UBと神経学的後障害との間に強い関連性があることがこれまでに数多く報告されている2)。UBアナライザーはわが国のみならず,米国FDAの承認を得た唯一のUB測定機器である一方,検査試薬が日本以外で入手不可能な問題から,わが国以外では臨床現場でのUB測定は困難な現状がある。すなわち筆者らは,このUB測定および中村の基準に基づいた黄疸管理が,わが国における核黄疸(ビリルビン脳症)の少なさ,および良好な新生児予後に寄与してきたのではないかと考えている。
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