特集 Controversies in perinatology 2023 産科編
妊娠34~36週での非重症HDP―早期誘発
味村 和哉
1
MIMURA Kazuya
1
1大阪大学大学院医学系研究科・医学部産科学婦人科学
pp.1752-1755
発行日 2022年12月10日
Published Date 2022/12/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000727
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はじめに
「妊娠高血圧腎症(PE)に軽症はない」というメッセージが出され,PEと診断がつけば原則入院管理をし,満期(妊娠37週)になれば分娩して妊娠終結させるという方針に関しては,各国のガイドラインにおいてもほぼ異論のないところである。母体にとっては妊娠終結することが唯一の治療であり,とくに重症徴候のあるPEは危険である。しかし,児にとって早産期に生まれた場合の未熟性は,短期的な合併症のみならず,長期的な予後を考えるうえで難しい問題である。「産科医は,生まれてくる赤ちゃんの人生80年の生活の質を考えたうえで分娩時期を決定しなくてはならない」これは,筆者の偉大な先輩からの言葉である。産科医は生まれてくる新生児の管理をしなくてよいわけだが,それだけに安易な決定をしてはならないと思う。最近,妊娠34~36週のいわゆるlate pretermで,重症徴候のないPEを早期に分娩させるか待機的に管理するかをテーマにした研究に注目が集まっている。本稿では,それらの研究を紹介しつつ,早期に分娩を推奨する意見を述べる。なお,当院での管理方針というわけではないということはご理解いただきたい。
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