特集 母体救急医療・母体救命の進歩
総論
緊急症例発症時の初期対応に関する教育の実際 PC3(Perinatal Critical Care Course)
前中 隆秀
1
,
荻田 和秀
1
MAENAKA Takahide
1
,
OGITA Kazuhide
1
1一般社団法人ピーシーキューブ運営協議会
pp.202-207
発行日 2022年2月10日
Published Date 2022/2/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000000047
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はじめに
2010~2020年のわが国における妊産婦死亡症例をまとめた「母体安全への提言2020」(妊産婦死亡症例検討評価委員会,日本産婦人科医会)によると,事例検討の終了した477例の解析の結果,死亡原因は図1,21)のとおりで,年々減少傾向にあるものの約1/5を産科危機的出血が占めている。しかし,図3に示すとおり,産科危機的出血による心停止は初発症状の発症から30分以内で起こった事例はわずかであり,この30分間に処置や高次施設への搬送を適切に行うことで妊産婦死亡を1例でも減らせる可能性を示唆している1)。生命危機を伴う重症周産期救急疾患においては,時間的に余裕がないなかで,産科的専門知識と救急的蘇生アプローチの両者が要求されるが,すべての周産期医療従事者がこれらに精通しているわけではなく,初期対応を行う産科医や救急医をはじめとした医療従事者の技量や連携次第で結果が大きく変わりうることは想像に難くない。すなわち,周産期救急にかかわる医療従事者が救急的蘇生アプローチと産科的専門知識,そして多職種連携に関して学ぶ機会を得ることは,母体救命の観点から意義は大きい。
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