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はじめに
米国家庭医療学会(American Academy of Family Physicians:AAFP)は2020年末にALSO(Advanced Life Support in Obstetrics)プロバイダーマニュアル第9版を発表した。今回強化された産科緊急症例発症時の対応における教育内容は,患者安全バンドルと患者安全ツールである。これらは,National Health Care Organizationsの学際的な共同研究であるCouncil on Patient Safety in Women’s Health Careが,Alliance for Innovation on Maternity Health(AIM)を通じて開発したものである1)。患者安全バンドルは4つのR ① readiness(準備),② recognitionとprevention(認識と予防),③ response(対応),④ reporting/system learning(報告とシステム学習)で構成され,産科異常出血や妊娠高血圧症候群などの緊急的な疾病への対応だけでなく,母体メンタルヘルス,オピオイド使用障害のある女性のための産科ケア,周産期の人種・民族間格差の是正など,内容が多岐に及んでいる1)。また,本稿にもっとも関連した内容として,母体の早期警戒基準など緊急的な対応についての安全ツールが示されている。重要なのはそのプロトコルのなかにチームアプローチに関する内容がかなり詳細に含まれているということである。ALSOプロバイダーコースの教育においては,1991年のコース開始以来,複数の専門分野にわたるチームワークが奨励され,アップデイトをくり返し強化されてきた。患者対応においては,単に個人の知識と技能に留まらず,チームワークトレーニングと患者安全を向上させることが不可欠であり,ALSOプロバイダーコースはその手法のエッセンスとエビデンスを提供している。
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