【シンポジウム】AMAモデルマウスに妊娠中にプラバスタチンを投与することによる妊娠高血圧症候群の長期予後改善の検討

Does administration of pravastatin to advanced maternal age mouse model improve long-term prognosis in hypertensive disorders of pregnancy?

Ⅰ　背景

　妊娠高血圧症候群（hypertensive disorders of pregnancy：HDP）は，「妊娠時に高血圧を認めた場合，妊娠高血圧症候群とする」と定義される。先進国においては，晩婚化，生殖補助医療技術の発展，合併症妊娠や妊娠合併症の管理技術の向上などの社会的背景から高年妊娠（advanced maternal aged pregnancy：AMA）が増えており，AMAは，HDPや妊娠糖尿病など産科合併症の発症リスクが高いとされる^1）。HDPは大きく次の4つの病型，高血圧合併妊娠（chronic hypertension：CH），妊娠高血圧（gestational hypertension：GH），妊娠高血圧腎症（preeclampsia：PE），加重型妊娠高血圧腎症（superimposed preeclampsia：SPE）に分類されるが，特にGHとPEはAMAの主要な合併症の1つである^1）。HDPの発症頻度は全妊婦の5～10％とされ^2），重症化すれば母児の生命を脅かす重大な周産期疾患である。母体では子癇，常位胎盤早期剝離，HELLP症候群，肺水腫，脳出血などを合併し，児は子宮内胎児発育不全，子宮内胎児死亡，新生児死亡を合併する。現在のところ治療法は分娩しかないため，予防が重要である。さらに，HDP罹患妊婦は，産後の人生において心血管疾患になりやすいことが報告されている^{3, 4）}。