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1 はじめに
血液透析患者におけるC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)抗体陽性率は約5%前後と考えられており,近年減少傾向ではあるものの,一般人口におけるHCV抗体陽性率である約1~2%と比較して明らかに高率である。血液透析患者においてHCV陽性の患者の生命予後はHCV感染のない血液透析症例に比較して有意に不良であることが報告されており1,2),現在の治療ガイドラインでは慢性腎臓病症例,血液透析症例に対してC型慢性肝炎に対する積極的な治療導入が推奨されている3)。実際に,2007年のKumadaらの報告によれば,血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)が正常値の範囲の症例であっても,10年の経過で約10%程度の症例に肝発癌がみられることが報告されている4)。これまでC型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法は,インターフェロン(interferon:IFN)ベース治療を中心に腎代謝であるリバビリンとの併用療法が長らく行われていたが,有効性は限定的であり,かつ高い有害事象の発現率のために治療困難例が多数存在していた。また透析症例に対するC型慢性肝炎治療としてペグインターフェロン単独療法が行われてきたが,特にHCVゲノタイプ1型の症例では治療後のHCVの排除率であるsustained virological response(SVR)率はきわめて低値であった5)。一方,わが国では2017年より,IFNを使用しないIFNフリー直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antivirals:DAA)が治療薬の主流となり,従来治療困難例とされていた症例に対しても高い有効性が報告されている。結論的には現在DAA治療でHCVを排除できない症例は非常に少なくなっており,SVR率は約99%である6)。また,IFN製剤に比してDAA製剤では有害事象の頻度が減少したことにより,これまで治療介入が困難であった高齢者や肝線維化進展例そして血液透析患者を含む腎障害例に対しても治療の裾野が広がっている7)。

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