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特集 腎疾患治療薬 フロントライン
各論
第2章 慢性腎臓病・透析合併症
3.利尿薬:バソプレシンV2受容体拮抗薬(トルバプタン)
Diuretics:vasopressin V2 receptor antagonist(Tolvaptan)
丑丸 秀
1
Ushimaru Shu
1
1聖マリアンナ医科大学病院 腎臓・高血圧内科
キーワード:
バソプレシンV2受容体拮抗薬
,
水利尿
,
入院下での導入
,
飲水指導
Keyword:
バソプレシンV2受容体拮抗薬
,
水利尿
,
入院下での導入
,
飲水指導
pp.139-143
発行日 2025年11月15日
Published Date 2025/11/15
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000002121
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1 はじめに
わが国ではバソプレシンV2受容体拮抗薬として,トルバプタンが2010年に心不全に対して保険適用が認められて以降,2013年に非代償性肝硬変,2014年に常染色体顕性多発性囊胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)と保険適用が拡大した。しかしながら低ナトリウム血症に対しては,2006年にモザバプタン(フィズリン®)が異所性バソプレシン(antidiuretic hormone:ADH)産生腫瘍の低ナトリウム血症に対して適応となって以降,長く,保険適用が認められていなかったが,2020年に待望の抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone:SIADH)に対して保険適用となった。さらに2022年には点滴静注製剤のバソプレシンV2受容体拮抗薬のトルバプタンリン酸エステルナトリウム(サムタス®)が,ループ利尿薬などのほかの利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留に対して保険適用となった。トルバプタンは,SIADHや浮腫性疾患などの水利尿不全による体液貯留や電解質異常〔ナトリウム(Na)濃度異常〕の病態に適している。さらに選択的に水利尿を促進するため,電解質の喪失が少ないメリットがある。このように,適応拡大による使用頻度の増加がある一方で,多量の低張尿が流出することに伴う高ナトリウム血症や浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination syndrome:ODS),肝機能障害などのリスクが生じる可能性がある。

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