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アルドステロンの作用機序
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の最下流因子であるアルドステロンは,腎臓や結腸などの上皮性標的組織において,ミネラルコルチコイド受容体(MR)と結合し,Naの再吸収やKの排泄を介して電解質や体液および血圧維持を担っており,古典的作用として知られてきた。MRは核内受容体に属し,アルドステロンがMRに結合すると二量体を形成して核内へ移行し,serum and glucocorticoid-regulated kinase 1(Sgk1)や上皮性Naチャネル(ENaC)などの標的遺伝子のプロモーター領域にあるミネラルコルチコイド応答配列(MRE)に結合して転写および翻訳を介して作用を発揮する。これはアルドステロンの“ゲノム作用”と呼ばれ,数時間~1日単位の時間を要する。一方,アルドステロンには転写や翻訳を介さず数秒から数分で生じる“非ゲノム作用”があり,心臓,血管,脂肪組織などの非上皮性組織に作用して血管平滑筋の収縮や血管内皮機能障害,心筋の細胞肥大等に関わることが知られてきた1)。非ゲノム作用は,膜型MRが,膜表面の他の受容体と相互作用して生じると考えられてきたが,MR拮抗薬(MRA)のスピロノラクトンでは抑制されないことから,MR以外の受容体の関与が示唆された。その後,G蛋白質共役受容体のG protein-coupled estrogen receptor 1(GPER-1)の関与が示された。GPER-1はエストロゲンと同様にアルドステロンと結合し,MR非依存性に活性化することができ,上皮型成長因子受容体epidermal growth factor receptor(EGFR)の共役活性化によりERKなどのMAPK活性化を生じさせて細胞増殖や分化,細胞死など広範な細胞現象に関わるため,心血管病の新たな治療標的として注目されている1)。

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