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はじめに
近年,透析患者の高齢化が進み,2022年の日本透析医学会(Japanese Society for Dialysis Therapy:JSDT)統計調査では,透析導入年齢の平均は71.42歳で,80代,90代の透析導入も稀ではない1)。介護保険を利用している割合や入退院を繰り返す患者が増えており,筆者らの施設でもこのような患者が増加している。入院理由は,整形外科的疾患や脳血管疾患,心血管疾患,肺炎などの内科的疾患などさまざまである。多くの入院施設ではリハビリテーション施設を備えており,患者が退院する際には,患者にあったリハビリテーションが指導されているはずである。しかし,わが国の外来維持透析を施行している4,000を超えるクリニックの多くはリハビリテーション室がなく,理学療法士も在籍していないものと思われる。2022年診療報酬改定において「透析時運動指導等加算」が加わったが2),1年後に行われた実態調査では,回答を得た1,657施設中で「透析時運動指導等加算」を算定している施設は550施設(33%)にすぎなかった3)。透析医療従事者(医師,看護師,臨床工学技士,管理栄養士,臨床検査技師)は,それぞれの資格を取得するために種々の教育を受けているが,これらの教育カリキュラムには運動プログラムは含まれていない。透析医療従事者は学習体験がないこともあり,患者に対してどのように運動を指導していけばよいのかわからず,運動療法を開始できないでいる施設も少なからず存在するのではないかと推察される。種々の要因で入院し,退院した透析患者のなかには,理学療法士の意見を聞かなければ専門職でない筆者たちにはリスクが大きく,運動指導することに躊躇する患者もいる。また,退院後に患者から詳細なリハビリテーション内容を聞き出すことも難しいのが現実である。理学療法士が不在の透析施設で,どのように運動療法を行っていけばよいかについて,筆者らの施設で行っている取り組みを紹介するとともに私見を述べたい。

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