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1 はじめに
血管炎は,血管のサイズと血清学的マーカーによって分類されるが,結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PAN)は,主に中型からの小型の動脈に炎症をきたす全身性の壊死性血管炎で,抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)や抗核抗体などの自己抗体は陰性である。罹患血管の炎症や狭窄などによって末梢神経,腎臓・脳・肝臓・心臓などの内臓,および皮膚などに障害をきたす。組織学的にはフィブリノイド壊死を特徴とし,肉芽腫形成や巨細胞は存在しない。PANは1866年にKūssmaulとMaierによって結節性動脈周囲炎(periarteritis nodosa:PN)として報告され,その後PANと名称が変更された。当時のPANのなかには顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA),多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)などほかの血管炎も含まれていた。しかし,1936年にWegenerらによってGPAが新たな疾患として独立し,1951年にはChurgとStraussによりEGPAが独立し,PANとされる疾患にはMPAと現在のPANが混在していた。その後,1994年のChapel Hill Consensus Conference(CHCC)においては,主として組織学的な所見から,細動静脈・毛細血管に所見があればMPAと分類することとし,PANは中型の,ときに小型の筋型動脈に生ずる壊死性血管炎で細動静脈・毛細血管が障害されないとされた。2012年のCHCCでは,糸球体腎炎や細動脈,毛細血管,細動静脈の血管炎を伴わない中型動脈や小動脈の壊死性血管炎で,1982年に同定されていたANCAとは関連しないと定義された1)。これらにより,PANはANCA関連血管炎とは完全に分離された。逆に言えば,少なくとも1994年までのPANのなかには,MPAも含まれていたと推定される。MPAは,急速進行性腎障害を高率に発症する半月体形成性糸球体腎炎や肺胞出血・間質性肺炎など予後不良な病態を有することから,同じPANという病名であっても1994年前後では疾患の性質はかなり異なる2)。現在のPANの患者数は,指定難病としての受給者証所持者(重症度分類における重症PAN)からは,図1のとおり最近はやや減少傾向ではあるが,2023年には2,143名であった3)。欧州におけるPANの有病率の報告によれば,地域差は多少あるものの100万人当たり2~33人と推定される4)。男女比は,2~3倍で男性優位とされ,40~50歳台に好発する。血清学的なマーカーが存在しないのが特徴といえる。
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