Japanese
English
特集 腎不全合併症に関する最近の進歩
腎移植 慢性移植腎症
Chronic allograft nephropathy(CAN)
清水 朋一
1
SHIMIZU Tomokazu
1
1東京女子医科大学移植管理科・泌尿器科
キーワード:
慢性移植腎症
,
interstitial fibrosis and tubular atrophy(IFTA)
,
慢性移植腎障害
,
腎移植
Keyword:
慢性移植腎症
,
interstitial fibrosis and tubular atrophy(IFTA)
,
慢性移植腎障害
,
腎移植
pp.682-687
発行日 2024年5月25日
Published Date 2024/5/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000001326
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はじめに
慢性移植腎症(chronic allograft nephropathy:CAN)は,腎移植後少なくとも3カ月後以降に起こる移植腎機能障害とされている1)。この状態は,血中クレアチニンの上昇,蛋白尿,高血圧の進行などで示される,進行する移植腎機能低下を表している1)。慢性移植腎機能低下は,推算糸球体濾過量(eGFR)が40mL/min以下か,尿中蛋白量が500mL/日以上とされている2)。この臨床的特徴は血管,糸球体,間質,尿細管における病理組織学的変化と関係している1)。最初は血管内皮障害,炎症,サイトカインの放出ではじまる。動脈内皮の肥厚による血管内腔の狭小化から虚血を生じ,糸球体硬化や間質の線維化を引き起こす1)。硬化していない糸球体は肥大し,局所的に糸球体濾過率が上昇することにより糸球体係蹄内皮のさらなる障害を生じさせ,結果的にはメザンギウム細胞の増殖やメサンギウム基質の蓄積に至る1)。後述するが,「慢性移植腎症(CAN)」は1991年のBanff会議で提唱され,組織学的には間質の線維化と尿細管萎縮(interstitial fibrosis and tubular atrophy:IFTA)とされてきた3)。2005年のBanff会議でCANという用語は使わずに,慢性移植腎障害(chronic allograft injury:CAI)は別々に診断するということになった4)。しかしながら,CANの用語はその後も論文でCAIと同義語として用いられている1)。その後は専ら,CAIとして論文には掲載されている5)。
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