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2023年3月でちょうど大学卒業後35年となり,卯年生まれの私は年男であり,またさらに還暦を迎える。先日,大学時代の学友と集まった際に,よく(医師として)続いたなあと感慨深く話をした。確かに研修医となり医師としてのスタートをきった時には,今日の私は想像できなかったであろう。しかしながら,まさに “Time flies” である。愛知県瀬戸市(藤井聡太竜王の出身地)にある公立陶生病院で研修させていただいたが,卒後2年目に腎臓内科をローテートした時に,ある意味運命的なことがあった。上司である公文進一先生が,ある患者のX線写真を手にして登場した。最初,私には何の疾患かわからず,答えに窮したところ,二次性副甲状腺機能亢進症の典型的な所見と教えてくださった。それから自分なりに勉強していくうちに腎性骨異栄養症(ROD)の魅力に取り憑かれてしまった。1人の患者の1枚のX線写真が私の運命を決めた。とはいえ,もちろん,今となっては本当によいきっかけだったと感謝している。当時のRODに対する治療といえば,経口の活性型ビタミンD,炭酸カルシウムならびにアルミゲルだけであった(その後すぐにアルミゲルは使用できなくなった)。それでも当時は,数少ない選択肢を最大限駆使して,何とか治療できないかと奮闘したことを覚えている。現在,手にしているchronic kidney disease-mineral and bone disorder(CKD-MBD)関連の薬剤は格段に増え,リアルワールドの臨床では,どの薬剤をどの用量で何を目安に選択するかを考える。このような時代が来ることも予想できなかった。ここでもまさに “Time flies” である。
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