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はじめに
わが国では透析患者の高齢化が進み,現在65歳以上の患者が69.1%を占め,75歳以上が36.9%いる状態である。また,透析導入患者が増加している割合が最も高い年齢層は男性が70~74歳で,女性は80~84歳である1)。高齢者が多くなると,腎不全以外の病気をもつ患者が増加し,透析で尿毒症を改善するだけでは不十分であり,平均余命も短くなる。透析患者の平均余命は,2005年末に発表された日本透析医学会報告では表12)のように,一般人口の平均余命の約半分とされている3)が,今日ではより透析技術も向上しており,平均余命はよくなっていると推測される。2011年のDOPPSの報告では75歳以上の平均余命は5.4歳であった。また,高齢者では透析治療自体が患者の負担となっている症例もあると考えられる。そこで透析を行わずに亡くなった患者と透析を行った患者で比較すると,生存した期間は透析を行った患者のほうが2年近く長生きしたが,通院にかかった時間や入院した時間を除き患者自身が自由に使える時間を比較するとほぼ同様であったとの報告4)があった。また,米国ナーシングホームに入居者中の75歳以上の患者の日常生活動作(ADL)は透析導入3カ月前から低下して,1年後に同等のADLを維持できたのは13%で,58%が死亡していたとの報告5)もある。高齢者にとって大事なことは,長く生きることよりも自立性を保てることと現在維持している生活の質(QOL)を保つことだとされる。このような事実から今後高齢患者は必ずしも透析療法を選択しない可能性がでてくる6)。しかしながら腎不全患者に透析をしないことは死期に近づくこととなり,緩和ケアが必要となる。
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