Japanese
English
特集 消化器内視鏡寸言集2025
Ⅶ.病理
パラフィン包埋標本は形態観察のみならず さまざまな分子病理学的解析手法を受け入れる
Formalin-fixed and paraffin-embedded tissue specimens can be applicable for various molecular pathological analyses besides morphological observation
下田 将之
1
Masayuki Shimoda
1
1東京慈恵会医科大学病理学講座・病院病理部
pp.636-637
発行日 2025年4月25日
Published Date 2025/4/25
DOI https://doi.org/10.24479/endo.0000002056
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
解説
病理学は,肉眼や顕微鏡で病変を観察することにより,病の理(ことわり)を追究する学問である。元来病変部位の形態観察を基盤としているが,HE染色標本のもととなるホルマリン固定パラフィン包埋(formalin- fixed paraffin-embedded:FFPE)標本は核酸(DNA,RNA),蛋白質といったきわめて重要かつ膨大な情報を有したサンプルであると同時に,世代を超えた期間にわたって保存可能である。FFPE標本作製過程では核酸の断片化や蛋白質の変性が起こるため,従来分子病理学的な解析には制限が多かったが,近年,さまざまな解析技術の飛躍的な進歩により,ゲノムなどの解析手技をFFPE標本にも適用することが可能となってきている。したがって,病理学(検体)は常に多様な方法論を研究・診断の手段として取り入れることができる,学際の器といった性格をもっており,今後はこれまで先達らが見出してきた病理形態学的な異常を分子病理学的な観点からその本質を解明することが可能と期待される1)。一方で,解析技術が進歩したとはいえ,ゲノムなどの解析に適した品質の良いFFPE標本を作製するためには,十分な知識と細心の注意が必要である。本稿では,分子病理学的解析に適したFFPE標本の作製・保管法を説明するとともに,FFPE標本で実施可能な分子病理学的解析手法についても簡単に解説する。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.