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はじめに
大腸癌の発癌経路として,serrated pathwayが提唱され1),sessile serrated lesion(SSL)は高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI high)を示す発癌経路として認識されている。SSLはMSI high,CpG island methylation phenotype(CIMP)high,BRAF遺伝子変異を有するといった特徴をもち,CIMP highが大腸がん検診で発見される大腸癌の特徴と共通しているため,主要な前癌病変である可能性が示唆されている2, 3)。2019年発行の “WHO Classification of Tumours” において4),SSLは他の鋸歯状病変〔hyperplastic polyp(HP),traditional serrated adenoma(TSA)〕とは,おもに病理所見の違いから区別される。具体的にはSSLは陰窩の拡張が腺底部1/3までみられ,L字/逆T字型を示すような拡張陰窩が特徴的である。さらにSSL with dysplasia(SSLD)は,SSLを背景に明瞭な境界を有するdysplastic componentを合併するものと定義され,dysplasiaには低異型度腺腫相当の病巣から癌まで含まれる。本邦の「大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン」で治療対象となるSSLは,①dysplasiaの併存を疑うSSLと②10mm以上のSSLである5)。10mm以上の根拠としては,10mm未満では癌の合併がないとする既報にもとづいている6)。また,同ガイドライン5)では切除後のサーベイランス間隔について3~5年後を提案し,dysplasiaを有する場合は3年後としている。欧米のガイドライン7, 8)でも鋸歯状病変に関する記載があり,組織型・サイズ・個数に応じて詳細にサーベイランス間隔を推奨している。共通していえることは,データの蓄積が少なくエビデンスが不足していることである。SSLに対する内視鏡治療において通常型腺腫と比較し断端陽性切除割合が31%と高いことが報告されており9),切除前に異型を伴う病変(SSLD)か否かの内視鏡診断が重要となってくる。
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