特集 こんなにある薬剤性消化管傷害
小腸および大腸 S-1による腸管傷害
迎 美幸
1
,
小林 清典
,
別當 朋広
,
川岸 加奈
,
横山 薫
,
佐田 美和
,
小泉 和三郎
1北里大学 医学部消化器内科学
キーワード:
下痢
,
腫瘍
,
腸炎
,
消化管内視鏡法
,
Mesalazine
,
TS-1
Keyword:
Diarrhea
,
Endoscopy, Gastrointestinal
,
Mesalamine
,
Enterocolitis
,
Neoplasms
pp.934-938
発行日 2019年6月25日
Published Date 2019/6/25
DOI https://doi.org/10.24479/J02312.2019312038
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S-1はフルオロウラシル系の抗癌剤に分類され、進行胃癌をはじめ多くの悪性腫瘍に対して広く用いられている。従来のフルオロウラシル系抗癌剤と比較し消化管傷害が少ないとされるが、S-1による下部消化管傷害も報告されている。自施設で経験したS-1起因性腸炎の8例は、下痢で発症する場合が多かったが、腸閉塞をきたし減圧チューブによる加療を要する症例もみられた。内視鏡所見では、全例で終末回腸に病変を認め、1例では直腸にも病変がみられた。内視鏡所見は、全例に潰瘍やびらんを認め、粘膜浮腫を伴っていた。潰瘍形態は、広範囲粘膜脱落、不整形、輪状などさまざまで、潰瘍の深さは1例を除き浅かった。全例S-1の休薬または減量で臨床症状の改善を認めた。S-1の服用例に下痢を認めた場合は腸管傷害の発症を念頭におき、内視鏡検査による確認が必要である。
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