特集 造血器腫瘍の微小残存病変(MRD)
5.悪性リンパ腫における微小残存病変と新たな標的
坂田(柳元)麻実子
1
Mamiko Sakata-Yanagimoto
1
1筑波大学 医学医療系 血液内科 准教授
pp.1257-1261
発行日 2016年8月30日
Published Date 2016/8/30
DOI https://doi.org/10.20837/5201609057
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急性あるいは慢性白血病において,治療後に体内に残存する微小残存病変(MRD;微小なレベルの白血病細胞)のモニタリングは実地医療に役立てられている。一方,悪性リンパ腫の効果判定はCTあるいはPET-CTによる画像検査が主体であり,MRDのモニタリングは限定的に行われてきた。たとえば,骨髄浸潤あるいは末梢血浸潤がある場合に治療後の骨髄あるいは末梢血中のリンパ腫細胞の残存の評価,あるいは自家移植における移植片へのリンパ腫細胞の混入の確認などの目的で行われてきた。こうした場合のMRDの指標としては,悪性リンパ腫特異的にみられる細胞表面マーカーの組み合わせ,疾患特異的な染色体転座,B細胞受容体あるいはT細胞受容体再構成が有用である。最近では,腫瘍細胞そのものではなく,リンパ腫細胞から放出された血漿あるいは血清に含まれる循環腫瘍細胞由来DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)によるMRDの検出が試みられている。 ゲノム解析から,悪性リンパ腫における遺伝子変異が明らかにされ,これらの変異体を直接に標的とする,あるいは変異体により活性化するシグナル経路を標的とする新規治療の開発が進められている。こうした場合に,遺伝子変異はMRDのマーカーとして利用しうる可能性がある。さらに,治療標的をコードする遺伝子変異の検出は,薬剤継続の可否を決定するのに有意義であることが想定される。本稿では,MRDの検出方法,あるいはこれに応用可能な方法について,今後の展開への期待を込めて解説する。