特集 静脈血栓塞栓症2016 ~わが国の最新の情報から~
7.癌に合併する静脈血栓症の管理
向井幹夫
1
Mikio Mukai
1
1地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター 循環器内科 主任部長
pp.375-381
発行日 2016年2月29日
Published Date 2016/2/29
DOI https://doi.org/10.20837/5201603071
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癌と血栓塞栓症は密接に関連し,中でも静脈血栓塞栓症(VTE:venous thromboembolism)は予後に大きく影響する重要な合併症の1つである。癌の増殖・転移に伴う凝固活性因子の産生が血栓形成に関与している上に,がん治療において化学療法,造血剤・輸血,そして体内カテーテル留置などによりVTEの頻度が増加している。癌症例に対するVTE治療は,従来の未分画ヘパリンとワルファリンによる治療から,新しい抗凝固薬の登場で治療戦略におけるパラダイムシフトが起こっている。癌症例は多くの合併症や脆弱性を有し,癌治療経過中のVTE出現,再発,そして重篤な出血の危険性が高い。これに対し,新しい抗凝固薬は従来の薬剤の弱点を補う特徴を有している。患者を十分に観察し,病態に合わせた薬剤選択による積極的な抗凝固療法は,血栓症のみならず癌そのものの治療を適正化し,予後の改善をもたらすことが期待される。