連載 血液今昔物語 血液病‐原典・現点
第30回 鎌状貧血 ~分子病のプロトタイプ~
齋藤英彦
1
Hidehiko Saito
1
1国立病院機構 名古屋医療センター 名誉院長
pp.1248-1255
発行日 2014年7月30日
Published Date 2014/7/30
DOI https://doi.org/10.20837/52014081248
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原典 1)Herrick JB:Peculiar elongated and sickle-shaped red blood corpuscles in a case of severe anemia. Arch Int Med 6:517-521, 1910. 2)Pauling L et al:Sickle cell anemia, a molecular disease. Science 110:543-548, 1949. 要旨 1)20歳の西インド諸島出身の黒人男性の症例報告。下肢に多数の潰瘍痕を認め,血液検査で貧血と鎌状の形をした赤血球を観察した。2年半にわたるフォローアップでも常に観察された。梅毒,寄生虫疾患などを除外した上で,鎌状赤血球の原因は不明であるとしている。 2)鎌状貧血(ホモ接合体)のヘモグロビンは正常ヘモグロビンと比べて,チゼリュウス電気泳動法で異なる泳動度を示す。また,ヘテロ接合体は正常と鎌状貧血のヘモグロビンを6対4の比率で持つ。鎌状貧血のグロビン分子がより陽性に荷電しているためと推論し,分子病という名前をつけた。