特集 Precision Medicineのための難治性喘息の病態と治療
序 ~難治性喘息:原因の多様性と対応する治療の多様性~
足立満
1
Mitsuru Adachi
1
1国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授/山王病院アレルギー内科
pp.845-848
発行日 2017年6月15日
Published Date 2017/6/15
DOI https://doi.org/10.20837/3201707009
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気管支喘息(以下,喘息)は我が国の喘息ガイドライン(喘息予防・管理ガイドライン:JGL2015)において,「気道の慢性炎症を本態とし,臨床症状として変動性を持った気道狭窄(喘鳴,呼吸困難)や咳で特徴付けられる疾患」と定義づけられる。その基本病態に基づいた治療すなわち吸入ステロイドが普及したことによって,喘息患者のコントロールは著しく改善し,喘息死や喘息発作による救急受診や入院も激減した。一方では,良好なコントロールを得るために高用量の吸入ステロイドに加え,長時間作用性吸入β2刺激薬(LABA)やロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)など複数の抗喘息薬を必要とするか,これらの薬剤を使用しても喘息症状が残存する難治性喘息患者も存在する。近年,喘息をフェノタイプやエンドタイプでとらえる考え方が広がり,喘息が多様な疾患であることが強く認識されるようになった。難治性喘息に関しても同様に,難治化の原因には多様性があることが明らかとなり,それらに対する治療の多様性も求められる。近年,抗IgE抗体療法(オマリズマブ),抗IL-5抗体(メポリズマブ),そして気管支温熱療法の出現によって治療の多様化が現実化しており,今後もさらなる新薬の開発とその上市が期待されている。