Japanese
English
特集 HIV感染症の長期的治療戦略
4.薬剤耐性HIVの動向と今後の課題
Trends and issues of drug-resistant HIV in the pro- and post-ART era
杉浦亙
1
,
服部純子
2
Sugiura Wataru
1
,
Hattori Junko
2
1国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター感染・免疫研究部 部長/名古屋大学大学院医学系研究科免疫不全統御学講座 客員教授
2国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター感染・免疫研究部
キーワード:
薬剤耐性HIV
,
Antiretroviral therapy
,
治療難渋症例
,
Transmitted drug resistance
Keyword:
薬剤耐性HIV
,
Antiretroviral therapy
,
治療難渋症例
,
Transmitted drug resistance
pp.54-61
発行日 2013年8月25日
Published Date 2013/8/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201309054
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HIV感染症の治療には3剤以上の抗HIV薬を組み合わせた多剤併用療法(ART)が標準的な治療法として行われており,優れた治療効果をあげているが,薬剤耐性HIVの出現による治療の失敗が問題となっている。ART導入後,数年間は薬剤耐性HIVが治療失敗の原因の7割を占めていたが,その後の新薬開発等により治療は進歩し,薬剤耐性HIVに起因する失敗症例数は減少した。2009年の時点において治療に難渋する高度薬剤耐性症例の頻度は1.5%であった。ARTを受ける症例における薬剤耐性HIVの問題は抑え込まれつつある一方で,新規感染者への薬剤耐性HIVの伝播が問題となっている。わが国では新規感染症例の8~9%が薬剤耐性HIVを保有しており,診断時の薬剤耐性検査の実施が推奨される。ARTによりHIVを効果的に抑制することが可能となり,HIV感染症が慢性疾患と捉えられるようになった現在,次なる治療戦略として潜伏感染細胞を標的にした薬剤開発や移植等によるHIVの排除が活発に行われており,将来の根治療法につながることが期待されている。