Japanese
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特集 世界に広がるトロピカルディジージズ
5.シャーガス病
Chagas' disease
平山謙二
1
Hirayama Kenji
1
1長崎大学熱帯医学研究所免疫遺伝学分野 教授
キーワード:
クルーズトリパノソーマ
,
サシガメ
,
心臓シャーガス病
,
巨大結腸症
,
輸血感染
Keyword:
クルーズトリパノソーマ
,
サシガメ
,
心臓シャーガス病
,
巨大結腸症
,
輸血感染
pp.60-68
発行日 2013年7月25日
Published Date 2013/7/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201308060
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シャーガス病は1909年にブラジル人のカルロス・シャーガス(1879~1934年)により,その病態が解明された鞭毛虫類に属するTrypanosoma cruziという寄生原虫による感染症である。アメリカ大陸に広く棲息するサシガメという吸血性の昆虫により媒介されるが,ヒト以外にも150種ほどの野生動物が感染保有する人獣共通感染症である。中南米の人口は約5.5億人ほどだが,そのうち感染者は慢性の患者を含めて770万人で毎年4万人の新たな感染者を出している。また,慢性期の特徴的な合併症などで毎年1万2千人が死亡していると推計される。1980年代からの,殺虫剤や家屋改修による昆虫対策,母子経胎盤感染児治療,輸血感染予防や教育活動が実を結び,この30年で新たな感染者の数は著明に減少したが,感染後10年以上経過した慢性患者の治療が遅れているために心不全や巨大結腸症などの合併症の問題が継続している。慢性患者は輸血などの感染源となるため中南米からの移民の多い欧米や日本などでの対応が議論されている。