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連載 私達の研究(122)
マラリアと住血吸虫をともに殺滅する薬剤開発の動向
Future prospect of drug development effective for malaria and schistosomiasis
太田伸生
1
Ohta Nobuo
1
1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際環境寄生虫病学分野 教授
キーワード:
N-89,抗マラリア薬,抗住血吸虫病薬,ヘム代謝,虫卵肉芽腫
Keyword:
N-89,抗マラリア薬,抗住血吸虫病薬,ヘム代謝,虫卵肉芽腫
pp.114-121
発行日 2013年4月25日
Published Date 2013/4/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201305114
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寄生虫病治療薬の開発が遅滞している現状から,多くの疾患に同時に対応できる薬剤開発が望まれる。一部のマラリア治療薬は住血吸虫症に対しても高い効果を示すが,新規抗マラリア薬候補である合成化合物N-89も強い抗住血吸虫活性をもつ。その機序は必ずしもヘム代謝の阻害だけでは説明できない。特に,住血吸虫雌虫の成熟を阻害して宿主体内虫卵による発病を抑止する効果はユニークな特徴である。N-89は構造が単純であるために逆に構造活性相関解析が困難であり,プロテオーム解析など他のアプローチからの検討が必要である。マラリア治療薬が住血吸虫病にも効果をもち,単剤投与で2大熱帯感染症を同時に治療と予防できるならば大きなインパクトとなる。