医薬ジャーナル論壇
余裕を失った社会と向き合う−高齢化が本当に社会不安の元凶なのか?−
佐藤博
1
1新潟大学名誉教授
pp.27-29
発行日 2018年1月1日
Published Date 2018/1/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201801027
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2025年は団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる年であり,医療・介護サービスの需要が供給に追いつかない恐れがあるとされていることより「2025年問題」と言われている。そして,地域医療を含む医療制度改革や医薬品の費用対効果など,医療費抑制に関する後ろ向きの議論が盛り上がってる。当事者の立場から見ると,まるで高齢化のみが財政面を含めた社会不安の元凶かのように語られる世間の風潮に,何か余裕を失った社会の香りを感じる。「失われた20年」など,デフレと超低金利の長期化による低成長社会に安住し過ぎたツケが,国民に「技術革新などをテコとした経済を含めた成長」という前向きの志と戦略を忘れさせている。