特集 先制医療が切り拓く新たな地平~ライフコース・ヘルスケアの確立を目指して~
3.早期環境が健康に影響する メカニズム
久保田健夫
1
,
望月和樹
2
1聖徳大学児童学部児童学科・教授
2山梨大学生命環境学部地域食物科学科食品栄養学研究部門・教授
pp.2053-2057
発行日 2017年9月1日
Published Date 2017/9/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201709071
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遺伝子の調節を司るDNA上の化学修飾であるエピジェネティクスは,個体発生やからだの機能の維持に必須のメカニズムである。近年,幼少期の環境がエピジェネティクスを変化させ,糖尿病や精神疾患などの生活習慣病体質を形成することが分かってきた。一方,エピジェネティクスには可逆性があり,いったん変化しても修復が可能なメカニズムである。
実際,古くから使用されてきた精神疾患治療薬には,精神ストレスで変化したエピジェネティクスを修復する作用のあることが明らかにされた。エピジェネティクスはライフコース・ヘルスケアの概念を大きく変える生物学的メカニズムであり,これに基づいた先制医療の実現が期待されている。