連載 ●副作用・薬物相互作用トレンドチェック
注目論文を読み解く(62)
佐藤宏樹
1
,
澤田康文
2
1東京大学大学院薬学系研究科育薬学講座
2東京大学大学院薬学系研究科育薬学講座 客員教授
キーワード:
● アルツハイマー病,頭蓋内出血,ADL低下,食事,抗血小板作用,治療中止理由
Keyword:
● アルツハイマー病,頭蓋内出血,ADL低下,食事,抗血小板作用,治療中止理由
pp.1528-1535
発行日 2017年6月1日
Published Date 2017/6/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201706156
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〔今月の注目論文のポイント〕 1.米国の医療情報データベースを用いた研究において,スタチンの高曝露群(期間の半分以上で処方あり)では,低曝露群と比較してアルツハイマー病の発症リスクが低く,性別,人種,スタチンの種類によりリスクが異なっていたことが報告されている。
2.英国の医療情報データベースを用いた症例対照研究において,三環系抗うつ薬を服用中の患者と比較して,選択的セロトニン再取り込み阻害薬を服用中の患者では頭蓋内出血のリスクが高かったことが報告されている。
3.米国の医療・介護情報データベースを用いたコホート研究において,急性心筋梗塞後にβ遮断薬が開始された高齢者では,死亡リスクは低下したものの,ADL(activities of daily living)スコアが低下するリスクは上昇したことが報告されている。
4.健康成人を対象とした試験において,絶食時投与と比較して,高脂肪食後またはグレープフルーツジュース併用時のピルフェニドンの血漿中濃度が低下し,胃内容排泄時間の遅延による可能性が示唆されている。
5.健康成人を対象とした試験において,モルヒネの静脈内投与と併用でプラスグレルを経口投与した場合,プラスグレルの活性代謝物のCmax(最高血中濃度)が軽度に低下し,最大血小板血栓形成までの時間がわずかに遅延したことが報告されている。
6.オランダの大学病院一施設で尋常性乾癬のためメトトレキサート治療を受けた患者を対象とした調査において,治療中止に至った理由は効果不十分よりも副作用によるものが多く,治療継続期間の中央値は1.8年であったことが報告されている。