小特集 実地診療におけるリアルワールドエビデンスの意義と課題~実際の活かしかた,具体的な注意点:循環器領域を中心に~
2.リアルワールドエビデンスの意義~薬剤疫学を考える上でRWEには どういった役割が求められているのか?~
香坂俊
1
1慶應義塾大学医学部循環器内科・専任講師 東京大学大学院医学研究科医療品質評価学講座・特任准教授
pp.106-111
発行日 2017年1月1日
Published Date 2017/1/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201701106
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Evidence-Based Medicine(EBM)の導入によって ① 医療者側にとってその治療法が「Make Sense」なだけでは不十分であり,② 患者にとって重要なアウトカムの改善が認められなければその治療が実用的と捉えないという考え方(価値観)が定着した。しかし一方で,EBM が重要視されるに従い,RCT(ランダム化比較試験)で扱われるリサーチ・クエスチョンは細分化され,さらに試験の登録基準や除外基準,そしてアウトカムの規定にも「クリーン」な内容が求められるようになり,その結果として大規模臨床試験に登録される患者とリアルワールドの患者層に徐々に乖離が生じていった。その乖離を補完するために活用されているのが,昨今 Real-World Evidence(RWE)と呼称される分野の研究である。多くのRWEで登録されてくるデータは「通常のケア」を受けている患者群から集積されるものであり,RCTに登録される患者と異なり複数の背景疾患や介入を持つことも少なくない。本稿では,RWEの導入が具体的にどのように循環器疾患に影響をもたらしたかということについて取り上げる。