連載 ●副作用・薬物相互作用トレンドチェック
注目論文を読み解く〈56〉
佐藤宏樹
1
,
澤田康文
2
1東京大学大学院薬学系研究科育薬学講座
2東京大学大学院薬学系研究科育薬学講座 客員教授
キーワード:
● 網膜剥離,抗コリン作用,急性腎障害,CYP3A5,呼吸困難,クリアランス上昇
Keyword:
● 網膜剥離,抗コリン作用,急性腎障害,CYP3A5,呼吸困難,クリアランス上昇
pp.2744-2749
発行日 2016年12月1日
Published Date 2016/12/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201612144
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〔今月の注目論文のポイント〕 1.悪性黒色腫のためイピリムマブを投与された患者において,3回目の投与後に視力低下,網膜剥離を認め,中止により改善した症例が報告されている。 2.米国の医療情報データベースを用いたコホート研究において,高齢者の過活動膀胱に対する抗コリン薬使用の約3割は潜在的に不適切であり,そのような患者ではより医療コストがかかっていることが報告されている。 3.スイスの大学病院単施設の小児集中治療室に入院した患児を対象とした症例対照研究において,スルピリン,モルヒネ,アセトアミノフェンなどにより急性腎障害のリスクが上昇することが報告されている。 4.急性リンパ芽球性白血病の導入化学療法でビンクリスチンを投与され,重篤な神経障害性疼痛を呈した患者において,CYP(チトクロムP450)3A5が非発現型であったことが報告されている。 5.高血圧,冠動脈疾患などの既往がある患者にマシテンタンを投与したところ,肺水腫に伴う呼吸困難を呈した症例が報告されている。 6.精神病性うつ病患者を対象にオランザピンとセルトラリンの併用効果を検討した臨床試験の薬物動態解析において,セルトラリン併用でオランザピンのクリアランスが上昇したことが報告されている。