特集 PK/PDに基づく薬物療法と新薬開発の最前線
1.総論 ~ PK/PDの進歩と臨床応用の拡大~
谷川原祐介
1
1慶應義塾大学医学部臨床薬剤学・教授
pp.1643-1644
発行日 2016年7月1日
Published Date 2016/7/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201607053
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医療行為とは,医学的コンセンサスに基づいて個々の患者の治療にあたるものであり,標準化と個別化は両輪と言える。古くは「経験と勘に基づくさじ加減」であった投薬も,薬物動態学や臨床薬理学の進歩により,PK/PD(Pharmacokinetics/ Pharmacodynamics)理論やTDM(薬物治療モニタリング)に基づく個別化投薬(Personalized Medicine)の手法が確立され,「経験」から「科学」による意思決定へと移行した。投与薬物の至適投与量を総合的に探求するPK/PD学は,個別患者の投与量設定はもとより,近年では製薬企業の新薬開発にとっても必須の手法となっている。一方,1980年代から日常臨床に応用され始めたTDM は,患者個別の薬物血中濃度モニタリングと体内動態予測を皮切りに,薬物治療全般をマネジメントし,治療アウトカム自体を高めるものとなりつつあり,各領域における学会ガイドラインの標準化も進んでいる。本特集では,薬物療法を最適化するサイエンスとしてPK/PDを取り上げ,実地臨床における投与量の個別最適化と新薬開発における至適用量推定の両面から,その最前線を紹介する。