特集1 医師主導臨床試験への提言 ~今,何が求められているのか~
1.医師主導臨床試験の目的と信頼性確保のあり方
景山茂
1
1東京慈恵会医科大学・特命教授/臨床研究支援センター・センター長
pp.51-55
発行日 2015年1月1日
Published Date 2015/1/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201501051
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
EBM(evidence-based medicine)を実践するためのエビデンスの構築を目的とした医師主導臨床試験は実臨床試験(effectiveness trial, pragmatic trial)であり,一方,治験は最適条件試験(efficacy trial, explanatory trial)である。これらの試験では,求められる要件や精度が異なる。現在,問題視されているのは前者の実臨床試験であり,薬事承認を目的とする最適条件試験である治験を念頭に実臨床試験の規制を論じると,医師主導臨床試験の制度・規制をmisleadする恐れがある。
EU(European Union)では2004年のEU臨床試験指令により,医薬品を用いるすべての臨床試験にGCP(Good Clinical Practice)が適用されるようになった。この結果,医師主導臨床試験が著しく減少し,医師による新たな治療法の開発が抑制され,被験者(患者)保護を目的としたGCPがかえって患者の新たな治療へのアクセスを阻害するという状況を生んでいる。
医師主導臨床試験の制度設計は,実臨床試験と最適条件試験の違いを考慮した上で慎重に検討する必要がある。