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心房細動(AF)患者における脳梗塞の予防は,新規経口抗凝固薬が臨床で広く使用されるようになり,新たな治療の時代に入った。新規経口抗凝固薬は通常定期的なモニタリングが不要で,より簡便に脳梗塞を予防できるといった特長を有しているが,緊急手術時,出血時,薬剤の血漿中濃度の上昇を疑う時などの特殊な環境下では,一般的な凝固検査により抗凝固能を評価できることが望ましい。リバーロキサバンは第Xa因子を選択的に阻害することで,トロンビンの生成を抑制する新規経口抗凝固薬であり,その薬物血漿中濃度はプロトロンビン時間(PT)と相関することが分かっている。しかしながら,リバーロキサバンでは,ワルファリンにおけるプロトロンビン時間:国際標準化比(PT-INR)のような標準化された指標が確立されていないのが現状である。今回,J-ROCKET AF(Japanese Rivaroxaban Once Daily Oral Direct Factor Xa Inhibition Compared with Vitamin K Antagonism for Prevention of Stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation)の患者データを元にリバーロキサバン内服後のPT時間の推移がシミュレーションにより算出された。本データでは,血漿中リバーロキサバン濃度の最高血中濃度到達時間(Tmax)は,投与後2~5時間であり,Tmax付近である4時間後におけるPTは15mg内服下で中央値19.7秒(90 %信頼区間:13.8~ 31.3秒),10mg内服下で中央値18.3秒(90%信頼区間:13.4~ 27.4秒),24時間後では15mg内服下で中央値12.9秒(90%信頼区間:10.2~ 16.8秒),10mg内服下で中央値13.0秒(90%信頼区間:10.4~ 16.3秒)であった。実臨床ではさまざまなPT試薬が用いられているが,PTは試薬の種類によって影響を受けることが知られているため,薬効を評価する指標としてPT値を使うことはできないが,安全性については参考となる可能性が考えられ,今後種々の試薬を用いた検討がなされることを期待したい。