大腸LST(側方発育型腫瘍)の新展開
LSTの臨床病理学的および分子病理学的特徴
菅井 有
1
,
上杉 憲幸
,
永塚 真
,
高橋 弥生
,
荒川 典之
,
松本 主之
1岩手医科大学 医学部病理学講座分子診断病理学分野
キーワード:
p53遺伝子
,
大腸ポリポーシス-腺腫様
,
変異
,
表現型
,
CpG Island
,
DNAメチル化
,
Loss of Heterozygosity
,
B-raf癌原遺伝子タンパク質
,
発癌
,
側方発育腫瘍
,
KRAS Protein
Keyword:
Mutation
,
Adenomatous Polyposis Coli
,
Phenotype
,
Genes, p53
,
CpG Islands
,
DNA Methylation
,
Loss of Heterozygosity
,
Proto-Oncogene Proteins B-raf
,
Carcinogenesis
,
KRAS Protein, Human
pp.1135-1142
発行日 2015年7月20日
Published Date 2015/7/20
DOI https://doi.org/10.19020/J01937.2015338888
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
側方発育進展型大腸腫瘍(laterally spreading tumor;LST)の臨床病理学的および分子病理学的特徴について概説する.LSTは側方に発育する10mm以上の腫瘍と定義される.形態的特徴から顆粒型(LST-G)と非顆粒型(LST-NG)に分類され,さらに前者は顆粒均一型と結節混在型に,後者は平坦隆起型と偽陥凹型に亜分類される.LSTの肉眼分類は,顆粒の捉え方により判断者によって差異が生ずることが指摘されている.顆粒の均質性が明瞭である腫瘍のみを顆粒均一型に分類することが,LSTの臨床病理および分子異常の特徴を考えるうえで有用と思われる.LSTは大きさの大きい腫瘍が多く,核異型も通常型腺腫と比較して高いことが知られている.癌化率も高いことが指摘されているが,とくに結節混在型と偽陥凹型の担癌率や粘膜下層浸潤率が高いことが報告されている.LSTは直腸,S状結腸,上行結腸,盲腸に好発するとされる.分子腫瘍発生仮説の点からはLSTはadenoma-carcinoma sequence経路に相当するが,LST-GではAPCおよびKRAS変異の頻度が高く,LST-NGではそのような特徴はみられない.LST-NGには特徴的な分子異常は指摘できず,今後の検討が必要である.分子病理学的にはLST-GとLST-NGは異なった腫瘍群に属すると思われる.
Copyright © 2015, Nihon Medical Center, Inc. All rights reserved.