特集 腸内細菌研究の最前線 ―社会実装へ向けて
2.腸内細菌と疾患(6)腸管内代謝を応用した肥満糖尿病の治療戦略
上村 瑞葵
1
,
入江潤 一郎
1
1関西医科大学内科学第二講座糖尿病・内分泌内科
キーワード:
腸管ホルモン
,
腸管バリア
,
慢性炎症
Keyword:
腸管ホルモン
,
腸管バリア
,
慢性炎症
pp.1356-1362
発行日 2025年9月20日
Published Date 2025/9/20
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000003650
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肥満症や2型糖尿病はインスリンの分泌不全と抵抗性が病態の基盤となるが,その病態における腸内細菌と代謝産物の関与が注目を集めている.肥満糖尿病を有する個体は短鎖脂肪酸やインドール類などの腸管内代謝産物量が非肥満個体と異なり,そのためGLP-1など腸管ホルモン分泌が低下し,また腸管バリアが低下し腸内細菌由来物質により肝臓や脂肪組織に慢性炎症とインスリン抵抗性が生じていることが明らかになった.治療においても,難消化性多糖を含む食事,高強度の運動,スリーブ状胃切除術,糖尿病治療薬メトホルミンなど,臨床で用いられているさまざまな治療介入が,腸内細菌と代謝産物を変化させ,効果を発揮していることも見出された.腸管内代謝を操作する新たな肥満糖尿病治療の開発が期待される.

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