これ一冊ですべてわかる消化器超音波検査
Ⅴ POCUS 【コラム】腹部外傷時の超音波(FAST を中心に)
小泉 哲
1
,
大坪 毅人
1
1聖マリアンナ医科大学消化器・一般外科
キーワード:
FAST
,
Trauma
,
JATEC
,
Primary survey
Keyword:
FAST
,
Trauma
,
JATEC
,
Primary survey
pp.1161-1163
発行日 2020年8月7日
Published Date 2020/8/7
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000001300
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FAST が外傷診療時に超音波検査機器を用いた診断法であることは周知のことと思われる.しかし本誌読者の多くは外傷診療に従事した経験のない方も少なくないと予想されるので,本稿では基本事項を多く含ませたことをご容赦いただきたい.そもそもFAST は,“外傷初期診療時に超音波検査によって腹腔内出血の有無を評価することが可能である”と1991 年にわが国のKimura らが発信した後,その手法が米国内で急速に普及し確立されたものである.そしてわが国でもすでに広く普及しているJapan Advanced TraumaEvaluation and Care(JATEC)ガイドライン(わが国の外傷診療事情に即して2002 年に作成された外傷診療標準化プログラム)において,FAST はprimarysurvey のうち,“C”の異常,つまりショックの原因となる心囊液貯留,大量血胸,腹腔内出血の検索を迅速かつ簡易的に行うことができる有力な技法として位置づけられ,循環に異常を認める場合には必須の検査とされている.FAST は感度・特異度ともに高く正診率96~98%といわれ,これがprimary survey における必須の検査とされる根拠になっている.外傷初期診療中のある時点において循環に異常を認めていなくても,それ以降ショックに陥る可能性のある損傷を除外する意味でルーチンに行われるばかりか,FAST を繰り返し行うことで,経時的変化を評価でき腹腔内出血の診断精度を向上しうるものであり,FAST は外傷初期診療プロセスにおいて重要な役割を担っている.
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