HIF-PH阻害薬への期待と懸念
腎移植後貧血に対する期待と懸念
小西 加純
1
,
長浜 正彦
1
1 聖路加国際病院腎臓内科
キーワード:
腎移植後貧血
,
HIF-PH阻害薬
,
拒絶反応
Keyword:
腎移植後貧血
,
HIF-PH阻害薬
,
拒絶反応
pp.325-329
発行日 2023年3月10日
Published Date 2023/3/10
DOI https://doi.org/10.19020/CD.0000002497
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
移植後貧血(post transplant anemia;PTA)は移植患者全体の20〜51%程度で発生すると推測されているが,報告によってPTAの定義は一貫していない.本邦の「2015年版日本透析医学会慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」では,PTAはWHOの一般の貧血の定義と同様に,成人男性でHb値13 g/dL未満,成人女性でHb値12 g/dL未満としており,同じ基準を使っている論文が多い. また,透析導入をしていない慢性腎臓病(CKD)の患者(CKD-ND)と比較して,移植後CKD(CKD-T)の患者では有意に貧血の有病率(30〜40%)が高いのも特徴的である.これは,移植後貧血の原因は多岐にわたり,エリスロポエチン(EPO)の相対的産生障害だけでなく,腎移植患者特有の免疫抑制薬や拒絶反応を含む炎症,感染症,悪性腫瘍などの関与が挙げられるからだ.実際,EPO製剤であるダルべポエチンアルファを標準的な量(0.75 μg/kg:2週間に1回投与)を3カ月間PTAに使用した際に,全体の68%もの患者がEPO低反応性貧血の状態であったという報告もある. PTAは出現時期により移植後早期貧血(early PTA)と移植後維持期貧血(late PTA)に分けられ,頻度として二峰性の分布をとる.すなわち,PTAは移植後周術期にまず認められ,移植後3〜6カ月ほどで改善し,しばらく安定した後は数年かけて徐々に貧血が認められるようになる.また一般的に移植後貧血はlate PTAを指すことが多い.
Copyright © 2023, Nihon Medical Center, Inc. All rights reserved.