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日本麻酔科学会第72回学術集会講演特集号 学術委員会:学会賞記念公演
慢性痛における下行性抑制系の役割とその変化
The Roles of Descending Noradrenergic Pain Inhibitory System on Chronic Pain and Its Alterations
須藤 貴史
1
Takashi SUTO
1
1群馬大学大学院医学系研究科麻酔神経科学
キーワード:
慢性痛
,
神経障害性疼痛
,
青斑核
,
ノルアドレナリン
,
内因性鎮痛
Keyword:
慢性痛
,
神経障害性疼痛
,
青斑核
,
ノルアドレナリン
,
内因性鎮痛
pp.S173-S180
発行日 2025年11月20日
Published Date 2025/11/20
DOI https://doi.org/10.18916/masui.2025130024
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はじめに
ヒトを含む動物には痛みを抑制する機構が存在すると考えられており,オピオイド,ノルアドレナリン,セロトニン,オキシトシン,オレキシンなど多くの分子の関与が報告されている。本論文ではこの痛み抑制システムを “内因性鎮痛機構” と定義して詳しく解説していく予定である。内因性鎮痛機構は数多くの回路から構成される。例えば,視床下部や下垂体で産生されるβエンドルフィンなどの内因性オピオイドは,脳,脊髄,末梢神経に広く分布するオピオイド受容体と結合して鎮痛をもたらす。また,中脳水道中心灰白質の神経を抑制することにより,吻側延髄腹内側部(rostral ventromedial medulla:RVM)のセロトニン作動性神経が興奮する。RVMからはセロトニン作動性神経が脊髄後角へ下行性に投射しており,脊髄後角でさまざまなセロトニン受容体と結合することで痛覚の抑制や促成を含めた調節に関与する。橋に対で存在するノルアドレナリン作動性神経の中枢である青斑核も脊髄後角へ投射し下行性抑制系を構成する。
今回は特にノルアドレナリンを介した下行性抑制系に注目し,急性痛や慢性痛に対する作用,さらには慢性痛状態での青斑核や下行性抑制系の変化,その意義について考察する。

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