胸腹部大動脈瘤手術における脊髄虚血予防―多施設研究からの知見―

Strategies for Spinal Cord Protection in Thoracoabdominal Aortic Aneurysm Surgery：A Multicenter Analysis

はじめに

　大血管手術の術後に起こる下肢麻痺は重篤な合併症で患者の生命予後にも影響を与える。最近のメタ解析では累積の発症率は4.5％とされている。開胸開腹の下行置換・胸腹部大動脈置換では5.7％，血管内修復術では3.9％，下行置換では3.5％，胸腹部置換では7.6％と術式によりばらつきがあるが20人に1人は発症することになる^1）。この脊髄虚血を予防することは重要なテーマである。