増刊号 それぞれの創傷治癒
6.血管の創傷治癒
吉田 周平
1
1広島大学形成外科
pp.S25-S29
発行日 2024年6月30日
Published Date 2024/6/30
DOI https://doi.org/10.18916/keisei.2024130009
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はじめに
創傷治癒における血管の役割は非常に重要で,創傷治癒過程においては適切な血管新生が必須である。創傷治癒過程では非常に多くの種類の細胞が各段階で作用するが,血管新生による密な血管網が形成される必要がある。血管は,主に内腔を覆う1層の内皮細胞と,それを外側から取り巻く壁細胞(毛細血管におけるpericytes,動静脈における血管平滑筋細胞)の2種類の細胞から構築される(図1)。血管という臓器の成熟には,これらの細胞それぞれの分化・成熟とともに,これらの細胞が正しく相互作用し血管としての安定した構造が構築されることが必要である。血管システムの完成にはこのように多段階の過程を経ることが必要であり,これらの過程のいずれかに問題があれば血管新生は不完全なものとなる。血管新生が不完全な創傷は糖尿病や虚血肢,放射線障害に代表されるような難治性潰瘍となる 1)。
本稿では創傷治癒における血管の新生過程について述べる。
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