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副腎皮質機能亢進症を有する患者の創傷治癒が不良であることは既に度々報告されておつた.ACTH(adrenocorticotropin)が投与されている患者には開放性創傷,切開された膿瘍及び組織の試験的切片切除創は何れも正常の肉芽組織の発生を示さないで,その治癒が遅い.則ちACTHは実験的に作つた創の肉芽組織の形成を抑圧するものである.著者は実験的に動物の創傷及び骨折に於てそれを研究して,その結果を発表している.それによれば治癒現象は甚しく阻害され且つその結果は「反応力の抑制」と云うことに帰著されている.
又種々の種類の動物の創傷治癒に対するACTHの影響に就ても観察されているが,その中で皮内注射したヒスタミン及び白血球の変動を起すpeptideの作用に対する影響も見られている.更にACTHの影響が動物の種類によつても異つていること,即ちACTHはモルモツトの創傷治癒には影響しなかつたが,白鼠では肉芽組織形成を多少低下させていた樣であつたこと又兎では創傷治癒を遅延したことを認めた.白血球の変動を起すpeptideやヒスタミンの液を兎の皮膚に注射して,その丘斑の形成に対するACTHの影響を観たが,その結果は従来の研究者の所見と一致した.又兎に於ては比較的大量にACTHを与えた時に創傷治癒は遅延した.ACTHがヒスタミンや白血球の変動を起すpeptideの皮膚反応を抑制することはこの機序が,したがつて,一種の炎症性のものであることを示唆し且つそれに継発する治癒現象が低下されるのである.更にACTHが組織の炎症性反応を減退すると云う仮説は本剤が急剤リウマチス及びリウマチス性関節炎〜両者共に過度の炎症性反応を起した状態を現すものである〜に於て効果のあることをよく説明するものであろう.
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